「いつも世界は遠く、」何気ない日常を

少し前のことになりますが、葉山の御用邸のそばにある
神奈川県立近代美術館の葉山館で開催されていた
写真展「上田義彦 いつも世界は遠く、」を見に行ってきました。

上田義彦さんの写真集を初めて手に取ったのは、もう二十年ほど前のことです。
上田義彦さんの奥様である
桐島かれんさんと四人のお子様たちの何気ない日常を切り取った
モノクロの写真集「at Home」
私も小さい三人の子どもたちと毎日を過ごしていたあの頃
大切に大切にページをめくりながら、心を癒していたことを覚えています。

古い洋館に住む家族の姿、特別なことが起きているわけではないけれど
「こんな家族の時間があったら」
「こんな何気ない風景の中で暮らせたら」
私もそうしてみよう。
そんなことを思っていました。

今回の写真展には、その写真集の作品に加え
日本や海外で撮影された写真がたくさん展示されていました。
家族の写真もあれば、旅先の風景の写真もあり
俳優さんの写真も何点も並んでいました。

上田義彦さんが長い時間をかけて見てきた世界が、そのまま並び
写真一枚一枚に、気持ちがあるような、息づかいを感じるような、そんな感覚が伝わりました。

その日はちょうど、上田義彦さんと内田也哉子さんのアーティストトークも
会場の一角で開かれていました。
少し離れたところから、その様子を見ることができました。

上田義彦さんは、静かな声で、じっとそこに佇んでいる。
まるで、写真の中にいるようでした。
内田也哉子さんは、あの何とも言えないあたたかな声で
場の空気をやわらかく包み込んでいました。

美術館の外に出ると、目の前には一色海岸が広がり
後ろには山や丘が続いています。
風や波の音を感じながら、ゆっくり時間が流れている。
ふらっと立ち寄れる、そんな素敵な美術館。
葉山の自然と一緒に、時を刻んでいるようなところです。

ドライブをしながら海を見に、ランチに
心の休息に立ち寄るのもいいかもしれない、と思いました。
いずれは、葉山に住んでみたいな。

写真に写っているのは、決して特別な場面ではないけれど
その何気ない日常が、とても愛おしく思えてくる。
日常を、こんなふうに眺め直してみてもいいのかもしれないな
そんなことを思いながら。

もし、私の日常を切り取ったら、どんな写真になるのだろう。

真剣だけれど、やさしいまなざしで、誰かと向き合っている。
頷いているかな。
微笑んでいるかな。
受け止めているかな。

そんな一枚がどこかに、いつか残ったらいいな。

上田義彦

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酒井 のり子
酒井 のり子
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